韓日問題 用語10 ①
- hyggeinfo
- 2023年4月16日
- 読了時間: 6分
<歴史と向き合う朴裕河2022年出版>から抜粋
※日韓→韓日 慰安婦→日本軍性奴隷 など 変えています。
著者は韓国の方で日本を先に持ってきてくださっていますが、こちらでは日本を後に変えています。
韓国の後に北朝鮮が書かれている場合、並びを変えています。
例:日本、韓国、北朝鮮→北朝鮮、韓国、日本
1<韓日合意>
韓日両国が日本軍性奴隷問題の「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した2015年12月の合意。
日本は軍の関与と政府の責任を認め、韓国が設立する元日本軍性奴隷の支援財団に10億円を拠出。
「元日本軍性奴隷の名誉や尊厳の回復、心の傷の癒しを行う」と決めた。
韓国はソウルの日本大使館前に設置された少女像をめぐり「適切に解決するよう努力する」と表明した。
韓日合意に基づき韓国は2016年7月、「和解・癒し財団」を設立。
合意当時生存していた元慰安婦に1人1億ウォン(約960万円)、死亡者には遺族に1人2000万ウォン(約190万円)を支給することにした。
文在寅(ムン・ジェイン)政権は「被害者中心主義」を掲げ、財団を解散させたが、元慰安婦の女性らが日本政府に損害賠償を求めた第1次訴訟の2021年1月の判決後には「両国政府の公式合意」と有効性を明言した。
また別の元日本軍性奴隷らによる第2次訴訟の2021年4月の判決は、韓日合意に基づく「和解・癒し財団」の設立を評価。
多くの元日本軍性奴隷が財団支給の現金を受け取った経緯にも触れ「合意は今も生きている」と確認した。
2<和解・癒し財団>
日本軍性奴隷問題をめぐって、日本の責任を認め、国家予算を使って補償すると日本政府が表明し、韓国政府が受け入れた2015年12月の韓日合意に基づき、韓国政府が2016年7月に設立した。
学者や政府関係者らが理事を構成し、被害者の心の傷を癒すことなどを目的に、日本政府が拠出する10億円を原資として当時生存していた元日本軍性奴隷には1人1億ウォン(約960万円)、死亡者には遺族に1人2000万ウォン(約190万円)を支給するというもの。
しかし「最終的かつ不可逆的な解決」とした内容や少女像撤去への協力約束などを理由に勧告挺身隊問題対策協議会(注:挺対協。原・日本軍性奴隷問題解決のための正義記憶連隊〔正義連せいぎれん〕)などが反対運動を起こし、文前大統領が就任した2017年5月以降は事実上、活動が休止した。
2018年11月に解散が決定し、2019年7月に残務処理に必要な清算法人になった。
3<韓日併合不法論>
1910年の韓国併合条約は調印当初から無効、すなわち不成立であるため法律根拠のない不当な植民地支配であり、本質的には軍事占領であったとする。
韓国の研究者からへ移動条約の前提になる1905年の第2次韓日協約(乙巳いっし保護条約)は韓国側代表に威嚇が加えられて調印がなされたことや、条約正当性を裏付ける論拠とされてきたが、1990年代に韓国などの歴史学者によって条約無効の史料的根拠が指摘されるに及んで、日本の支配に対する韓国の一般的な認識となった。
李泰鎮(イ・テジン)ソウル大学校名誉教授は、勅令・詔勅(しょうちょく)にある純宗(スンジョン)皇帝の署名が韓国統監府(注:韓日併合前に日本が韓国に設置した統治機関)の日本人職員による偽造であることなどを主張した。
これに対し、韓日合意に至る過程で結ばれた条約は その内容や手続きが極めて不当だったが、法的には有効であるとする反論がある。
日本では1998年から2000年まで総合雑誌「世界」において論争となり、森山茂徳・原田環編『大韓帝国の保護と併合』(東京大学出版会、2013年)などの反論も出されている。
韓日併合不法論
1965年6月に韓国と日本との間で調印された条約。
現在の韓日関係は同条約と諸協定を基礎にしている。
これにより日本は韓国を朝鮮半島の唯一の合法的政府と認め、韓国との間に国交を樹立した。
韓国併合条約など、戦前の諸条約の無効を確認した。
両国間交渉の末、総額8億ドル(無償3億ドル、政府借款2億ドル、民間借款3億ドル)の援助資金と引き換えに、韓国側は請求権を放棄した。
他方、韓日諸協定では日本の植民地支配を合法かつ正当であったとする日本側と、不法かつ不当であったとする韓国側が折り合えず、1965年時点で「もはや無効」という韓日双方で都合よく解釈できる条文を作った。
また「完全かつ最終的に解決された」請求権についても、日本は日本軍性奴隷被害者を含め すべて解決済みとしているが、韓国は日本軍性奴隷らの問題が議論されておらず現在も未解決であるとしている。
4<記憶の転移>
社会的に広まった話や伝聞情報、テレビや映画で見聞きしたことを自分の体験として考えてしまうこと。
たとえば、ある元日本軍性奴隷の「(日本が)挺身隊を道端で手当たり次第に供出させていった」(裵春姫ペチュンヒ・朴裕河『日本軍慰安婦、もう一つの声』プリワイパリ2020年)との発言に そうした現場を見ることができる。
なお、口述史研究社、鄭恵瓊(チョンヘギョン)氏も似たような現象を「記憶の社会化」と指摘している。
5<ニュルンベルク裁判>
1945年11月から1946年10月まで、ドイツのニュルンベルクで開かれた、第二次世界大戦のドイツの主要戦争犯罪人22人に対する連合国の国政軍事裁判。
史上初めての戦争犯罪に対する裁判で、平和に対する罪および人道に対する罪に問われ、12人が絞首刑に処された。
6<1991年の日本軍性奴隷 証言>
1991年8月、元日本軍性奴隷の金学順(キムハクスン)そじんが 韓国・ソウルで名乗り出て、日本の責任を告発した。
金学順そじんを含む元日本軍性奴隷や元軍人・軍属、その遺族らはこの年12月、日本政府を相手取り、戦後補償としての損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
7<光州事件>
1980年5月、韓国 全羅南道(チョルラナムド)の光州市を中心として起こった民衆の蜂起。
戒厳令発令に反対する学生デモ隊と警察・戒厳群が衝突、市民を巻き込んで多数の死者数を出したが、戒厳軍が鎮圧した。
事件の結果、国民に銃を向けた国軍と、国軍の移動を結果的に許した在韓米軍に対する国民の認識が変化し、反米感情拡大と反米闘争の原因ともなった。
8<クマラスワミ報告書>

国連人権委員会で任命されたクマラスワミ特別報告官が提出した1996年1月の報告書付属文書。
日本軍性奴隷は「軍性奴隷制」の事例であるという認定のもと、日本政府が国際人道法の違反につき法的責任を負っていると主張した。
一方、日本政府が道義的な責任を認め、アジア女性基金を設置したことを評価している。
日本政府は法的責任を認め、補償を行い、資料を公開し、謝罪し、歴史教育を考え、責任者を可能な限り処罰すべきだというのが報告書の勧告で、国連人権委員会はこの報告書付属文書を「留意する(take note)」と決議した。
9<マクドゥーガル報告書>
クマラスワミ報告書が提出された約2年後の1998年6月、戦時における女性に対する暴力に関する特別報告官マクドゥーガルそじんの報告書が国連人権委員会差別防止・少数者保護小委員会に提出された。
この報告は 慰安婦制度(原文ママ)を「レイプセンターでの性奴隷制」と捉えるものだった。
10<国際法律家委員会の報告書>
国際法律家委員会(ICJ)は1994年調査報告書「国際法からみた『従軍慰安婦』問題(原文ママ)」を公表した。
ICJは1952年に法学者、法律家によってジュネーブで設立され、「法の支配」により人権と基本的自由を保障することを目的とする人権NGO(非政府組織)。
調査は1993年4月~5月、フィリピン、北朝鮮、韓国、日本で、のべ40人の証言からの聞き取り、資料収集などを通して行われた。
報告書は「婦人および児童の売買禁止に関する国際条約」の締結国だった日本の条約違反などを認め、韓日請求権協定などは免責事由たりえないとして、日本に対し、性奴隷施設の運営・維持に関し保持している情報の開示や被害者のリハビリテーション措置などを求めた。
Comments